高松地方裁判所 昭和34年(ワ)168号 判決 1959年7月30日
原告 飯沼芳夫
被告 有限会社小判屋商店
主文
被告は、原告が別紙目録中(一)の為替手形を昭和参拾四年七月拾五日以後に支払のために呈示したときは金四拾四万円を、別紙目録(二)の為替手形を同年七月参拾壱日以後に支払のために呈示したときは金参拾八万八千円を、それぞれ原告に支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決中原告勝訴の部分は、原告において金拾万円の担保を供するときは仮に執行することができる。
理由
当事者の主張
原告訴訟代理人は、被告は原告に対し昭和三十四年七月十五日に金四十四万円を、同年同月三十一日に金三十八万八千円をそれぞれ支払え、訴訟費用は被告の負担とするとの判決並に仮執行の宣言を求めた。
その請求原因は、原告は訴外栗本行義がその署名に大阪市城東区古市中通一丁目十と附記し自己を受取人として振出した別紙目録の各為替手形二通を、同人から裏書譲渡を受けて現に所持している。被告はこれらの為替手形に引受をしている。これらの為替手形は右訴外人が被告に対してメリヤス類を販売した代金の決済方法として振出し被告の引受をえた数通の為替手形中の最後の二通であるが、被告はこれらのうちで支払期日が昭和三十四年六月十五日となつているもの一通を既に不渡にしているので、本件各手形をも不渡とすることは疑いがない。そこで各支払期日に支払をえられるよう本訴に及んだというのである。
被告は適式の呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかつた。
当裁判所の判断
本件は将来の給付を求める訴であるが、被告において明に争わない前記の原告の主張事実によると、予めその請求を為す必要がある場合に該ると認められる。
また右主張事実によると次の点を除いて本件各手形金額の請求を認容すべきものといわなければならぬ。
たゞ原告は各為替手形の支払期日に手形金額を支払えという確定期限附の請求をするが、為替手形の引受人に対して手形金額の支払を求めるためには支払期日またはその後に為替手形を支払のために呈示しなければならず(もつとも支払呈示期間内であることは必要でない。)このことは手形所持人が権利を行使するための要件であつて、支払期日前に手形金額の支払を求める訴状の送達があり支払期日当時当該訴訟がなお裁判所に係属していてもこの要件がみたされるわけではない。この呈示が将来における履行の条件となる。
よつて本訴請求をこの条件を附した限度で認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条、第九十二条但書、仮執行の宣言について第百九十六条を各適用した上、主文のとおり判決する。
(裁判官 山下顕次)
目録
為替手形の表示
(一) 金額 四十四万円
支払期日 昭和三十四年七月十五日
支払地 高松市
支払場所 株式会社中国銀行高松支店
受取人(裏書人) 栗本行義
振出日 昭和三十四年四月二十四日
振出人 大阪市城東区古市中通一丁目十
栗本行義
支払人 被告
引受人 被告(引受日附 昭和三十四年四月二十四日)
(二) 金額 三十八万八千円
支払期日 昭和三十四年七月三十一日
支払地 高松市
支払場所 株式会社中国銀行高松支店
受取人(裏書人) 栗本行義
振出日 昭和三十四年四月二十四日
振出人 大阪市城東区古市中通一丁目十
栗本行義
支払人 被告
引受人 被告(引受日附 昭和三十四年四月二十四日)